文化の壁

Life study abroad

【留学】異邦人としてドイツで人文学を学ぶということ 文化の壁と、それでも向き合う理由

はじめに

ドイツ正規留学はやめた方がいい??

ドイツ正規留学はやめた方がいい??
前回は「ドイツ正規留学」という選択について前向きな面を書きましたが、
今回はあえて、その裏にある「しんどさ」について書いてみたいと思います。
私は現在、ドイツで正規留学をしており、美術史を学んでいます。

けれど、その過程で何度も感じたのは、
「アジア人として、ドイツで学ぶ」ということの厳しさです。

それは単に文化の違いというよりも、
ヨーロッパのある種の閉鎖性の中でどう向き合っていくのかということです。

ドイツで学ぶ意義ある?本場で学ぶということ

そもそもドイツで学ぶ意義とは、所謂「本場」であることだと思います。

その「本場」というのもを私なりに定義してみると、
究極的にはドイツ語でしか学べない/ドイツ語でないと弊害が多いことだと思います。

つまり英語や日本語でも勉強できるようなものはドイツで学ぶ必要はないってことです。

社会科学においてドイツは「本場」?

例えば社会科学はアメリカやドイツがいくつかの分野で
「本場」と言われることもありますが、
学ぶ内容自体そのものには地域による差があまりありません。

たとえば、ミクロ経済学・マクロ経済学は
日本でもドイツでも基本的に同じ枠組みを教えられますし、
物理的な研究費が自然科学よりもかからないため、どこでも可能性です。

確かに、その経済思想などでは、
私もルソーやデュルケムでフランス語やドイツ語の概念を習いました。

その点においては確かにその言語で学ぶ方がより真意に近づくと思います。
しかし、それが自分の学びにとって重要でないのなら妥協してもいいと思います。
(もし思想史が知りたい場合は是非とも留学してください。)

社会科学分野であれば、留学という手段にこだわらず、
日本で学ぶ選択肢も十分「あり」だと思います。

逆にドイツでもミクロ経済学・マクロ経済学などの理論は同じだから、
国にとらわれず、
交換留学などで英語で挑戦する決断もそれはそれでアリだと思います。

異邦人として「本場」に飛び込む

私はドイツ語を学ぶことを第一条件として正規留学しているからこそ、
むしろ「ドイツ語と真っ向から向き合わなければ学べない」美術史を選びました。

自然科学などは比較的国際的で、
多様な留学生がいますが、

人文学部、特に美術史は明らかにアジア人が少なく、
私が知る限り、全学年を合わせてもアジア人は1%未満。

そんな環境に飛び込むということは、
「異邦人」であることを日々意識させられる経験でもあります。

本場=地域的な格差がある学問

本場とは地域間の格差がある学問であると思っています。
特に文化や言語に深く関わる分野になると思います。

わかりやすい例を挙げると、日本文化を日本で学ぶのと、
ドイツで学ぶのとではまったく前提が異なります。

日本では日本文化に興味がなくても、
義務教育で日本史や古文をある程度学び、
その土台の上で大学で日本文化を専攻します。

一方で、ドイツ人が大学で日本学を学ぶ場合、
多くの場合アニメなどにハマり、日本学を専攻します。

まずは現代日本語から始め、
日本史・日本文学の基礎を少しずつ積み上げていく形になります。

それはつまり、日本人がドイツ文学(Germanistik)を学ぶことと、
ドイツ人がそれを学ぶこととの違いにも同じことが言えます。

つまり本場=文化的な格差がある学問というのはその言語で学ぶ必要があるので、
留学するのはそこでしかない学びがあると思います。

しかしドイツ人が義務教育で身につけてきた知識の上に成り立っている分野に、
私たちはゼロから挑まなければいけないのです。

「対等」であるために


しかしそうは言っても、正規留学している以上はお客様ではなく、れっきとした一学生です。
そこで、私が普段意識していることを共有したいと思います。

できないのは当然だが、言い訳はしない

そうした中で、私が心がけているのは、「言い訳しないこと」です。
言語の壁は確かにあります。ドイツ語が完璧にできるわけでもない。
けれど、それを理由に嘆いてばかりではいけないと思うのです。

努力量で補う


私は、ドイツ人と対等な立場で学んでいる以上、
たとえ言語の面で不利でも、
それを努力の量でカバーすべきだと感じています。

誠意と準備で信頼を築く

だから私は、自分にできることは先回りしてやります。
例えば、ゼミのプレゼン発表があるときは、
なるべく中盤より少し前の発表日を選び、
セメスター開始からの7週間をその研究に集中させました。

そうするとことで、後半はテストに集中でき、
前半はゼミの発表に集中することができるからです。

そして、ドイツ人のペアの子に自分から相談して
「こういう構成にした方がいいと思うんだけど、どうかな?」と提案もしました。
少し面倒な作業でも、できる範囲で自分が率先してやります。

もちろん、常に完璧にうまくいくわけではありませんが、
少なくともそんな姿勢を取っている人を悪く思う人はいないはずです。

ドイツ人に負けられない。

ドイツ人が分かること+ドイツ人が分からないこと
(自分のバックグラウンドから学べること)
の両方を吸収してやろうというのが、私のモットーです。

もちろんそれは現状的にはかなり難しいことであっても、
私はそのやる気だけはドイツ人に絶対に負けない自身があります。

対等な立場に立ちたいからこそ、ドイツ人に負けたくない。
彼らよりもきちんとした成果や価値を示したいと思っています。

だからこそ、休みという概念はありませんし、
夏休みこそが研究できる絶好の時間ですし、
差がつける時間です。
(実際には追いつくが正しいのかもしれませんが)

おわりに

「異邦人として、ドイツで人文学を学ぶ覚悟があるかどうか」が問われているのだと思います。
そしてそれはそのくらい好きであるか、夢中になってできるかではないでしょうか。

周りの環境のせいにせず、自分に対しても言い訳をしない状況か、ということです。

もちろん時にはそういう状況に嫌になってしまうこともあるでしょうし、
この内容が綺麗事に感じてしまう時期もあるでしょう。

しかしそれでも一歩ずつでも学び続けることで、良かったと思える日がくるでしょう。

まだ私自身ももがいている最中ですが、それでも私は美術史を学んで辛いけれど幸せです。

もし、そんな実態を知りつつも、夢中になってできるものならば、
異邦人として、一緒ドイツで頑張りましょう。

前回の記事はコチラ↓

-Life, study abroad