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はじめに
この記事では、私がドイツの大学で第一学期に経験した挫折についてお話しします。
これが学科選びや留学準備をする方にとって、少しでも有益な情報になれば幸いです。
私は美術史を学ぶためにドイツの大学に進学しました。しかし、歴史を副専攻に選んだ結果、第一学期で大きな壁に直面しました。
ドイツの大学システムと自分の選択
ドイツの大学では、3つに分かれています。
Naturwissenschaft(自然科学)
Sozialwissenschaft(社会科学)
Geistwissenschaft(人文学部)
そのうち人文学部の学生は、
主専攻(Hauptfach)と副専攻(Nebenfach)を選択するのが一般的です。
私は美術史を主専攻にし、副専攻には歴史を選びました。
美術史と歴史を組み合わせることで、幅広い視点を得られると考えていました。
そして言語的にも必要レベルとやりたいことも一致していたので、歴史を選びました。
下記が学部における学士過程に入るための英語以外の外国語の必須要項です。
外国語の必須要項
美術史:イタリア語、フランス語、ラテン語のいずれかでB1以上のレベルが必要。
歴史学:フランス語またはラテン語でB1以上のレベルが必要。
第一学期で直面した困難
歴史学を副専攻してみて
歴史学というのは過去の人類の記録であり、科学、宗教、法など様々な語彙が必要で、外国人にとっては難しい学部の一つです。
歴史学の中世プロセミナーに参加した私は、次のような課題に直面しました。
ドイツ語という言語の壁
ミーティングは2.5時間。教授も学生も早口で何と言っているかわかりませんでした。
課題量の多さ
課題は40ページの要約と追加作業(前回の課題の解説動画、資料調べのリソースなど)がありました。
これらをこなすには平均して1日4–5時間をプロセミナーに費やすことになり、
主専攻である美術史の学習にまで手が回りませんでした。
言語選択の失敗
歴史学の副専攻を続けるには、確かにラテン語やフランス語を学べば良かったと思います。
しかし私はイタリア美術史を勉強したくわざわざ大学で学ぼうと思ったわけで、
言語選択でイタリア語を譲ることができなかったのです。
このままの状況ではイタリア語は愚か、他の外国語もできないということです。
以上の3つの理由で要因から、私は歴史学を断念しました。
確かに私が参加していた中世のプロセミナー(ゼミよりも前段)は
一番厳しく課題が多い教授だったらしいのですが。
ドイツの大学で歴史学を専攻する難しさ
歴史学はドイツ人にとってもハード
主専攻において
一般的に人文学部は(うまくいけば)3年で卒業できるところ、
歴史学は(上手くいっても)4年かかる。
副専攻でもその半分くらいのことはするので、
他の副専攻よりも難易度が高いと思います。
(もちろん、時間をかけられるのなら、話は別ですが、)
想定している学生がヨーロッパの学生
美術史であれ歴史であれ規定で想定されている学生というのは
ヨーロッパの学生で、英語はもちろん
多かれ少なかれラテン語系を義務教育で習っている人達
私みたいに英語とドイツ語が怪しい日本人は想定されていない。
ラテン語系の1つを
『各自B1レベル取っといてね』って言われちゃ困る。
もし日本の大学で西洋美術史を学ぶなら、
つまり一般的に想定されている日本人の学生は
イタリア語とドイツ語ができれば他の副専攻は不要です。
例えば
ロシア人はフランス語を学校で習ったりする。
ロシア語が仮にドイツ語や英語と全く別モノだったとしても、
アカデミックな内容では基本的にラテン語由来でそこまで違いもないし、
アジア諸国よりは似ているの分類にはいる。
ということで
アジアの学生で英語も公立学校レベルの私の場合、
他の外国語を学ぶ時間を調達しないといけないのは、
言語的にハードルが高いというわけです。
歴史学から日本学への転換
日本学を選んだ理由
外国語学習への時間確保
歴史学よりも負担が少ない日本学を選ぶことで、
他の勉強にも時間を割けるようになりました。
具体的には日本学の必修では3講義分の日本語が免除で、
その時間をイタリア語やフランス語の習得に充てることができそうです。
さらに、ドイツの日本学であって、日本の日本学ではないため、
広く浅く学ぶため内容よりもドイツ語の向上に集中できることも理由の一つ。
日本語という強みを活かす
将来を考えたとき私の強みは日本語だ。
例えば、日本美術やジャポニズムに関する研究を西洋美術と比較することが自分の優位性がある。
一方でイタリア美術史をヨーロッパで研究していくのは厳しいと思っている。
例えば
美術史ではスイス人の教授がいる。
もちろんドイツ語と英語は話せるし、イタリア語もフランス語もできる。
その美術史で基本的な4カ国が母語でない、
インド=ヨーロッパ言語ですらない母語とする私にはかなり不利な状況である。
翻訳への関心
別にこれは優先順位としては高くないけれども、
映画や文学の翻訳に興味があり、
その中で感じた課題や違和感について考察、議論をしたいと思った。
結果
副専攻の変更後、
日本学のカリキュラムは私にとって非常に現実的で、効率よく単位を取得することが可能になりました。
日本学副専攻で得たもの
時間とエネルギーの配分
美術史と日本学のバランスが取れ、外国語学習や他の興味にも取り組む余裕が生まれました。
人間関係の構築
日本学の講師や学生の中には、日本語に関心を持つ人が多く、共通の話題でつながることができました。
また、同じように言語的な課題を抱えた日本人学生との交流も生まれました。
日本語の文献にアクセス可能
美術史において東洋の視点と西洋の視点を交えて論文を書きたいと思っていたので、
日本の論文にもアクセスできるようになります。
日本学の学生であることが証明できると日本語の研究のアーカイブに入ることもできます。
図書館では限られた資料しかないので、やはり大きな得点です。
最後に
第一学期の挫折を通じて、私は自分に合った学び方や進路を見つけることができました。
それは私にとってやりたいこと、イタリア美術史を学ぶための多少の犠牲だったと思います。
日本学は人間関係にも恵まれて楽しいです。
そしてドイツ人から見た東洋、日本人からみた西洋美術史という異文化理解のための視点を学べた気がします。
私の経験が、これから学科選びや留学を考えている方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
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